『藤沢文翁×吉田良一郎 スペシャルトークショー』レポート

5月27日、5月28日に上演を控える「義経千本桜」のシアトリカル・ライブ スペシャルトークショーが3月4日に行われ、劇作家の藤沢文翁さんと津軽三味線奏者で吉田兄弟の兄・吉田良一郎さんが出席しました。

左から藤沢文翁さん、吉田良一郎さん、レイチェル・チャンさん

 

会場となった武蔵野カンプス(東京)には、プラチナチケットを引き当てた50人が集結。「義経千本桜」の裏話や、吉田さんの生演奏で盛り上がりました。

会場となった武蔵野カンプス

ニコニコ生放送でも生配信された本イベントは、レイチェル・チャンさんの司会で幕を開け、冒頭では藤沢さんと吉田さんの出会いが語られました。藤沢さんが吉田さんを知ったのは、海外の空港で偶然手に取った吉田兄弟のCDがきっかけ。海外での留学中だった藤沢さんは「自分と同じく海外で頑張っている人がいるんだ」と刺激を受けたといいます。

一方で当時の吉田さんの印象については、「今はエビス様みたいににこやかですが、(当時は)人殺しのような顔で津軽三味線を構える金髪の男2人が(CDのジャケットに)写っていました」とニヤリ。会場を沸かせました。

乾杯で始まったトークショー

その後も吉田さんのファンだったという藤沢さんは、2012年に上演された戦国ブログ型朗読劇 「叢雲-MURAKUMO-」で吉田さんを音楽監修に抜擢(スケジュールの関係で出演は叶わず)。吉田さんは「まず朗読劇ということで、面白いなと思いました。音楽が和楽器だけで表現できるというところにも興味を持ちました」と振り返りました。藤沢さんについては「和楽器というか、『和』が好きな方なんだな」と感じたといい、吉田兄弟の楽曲などにもかなり詳しい藤沢さんには驚いたといいます。

司会のレイチェル・チャンさん

また藤沢さんの朗読劇について「(最近はスタイルが)変わってきましたよね」と吉田さん。藤沢さん自身は以前と比べると作風が“真面目”になり、特殊効果の煙の量が増えたと語りつつも、「僕のことを『炎の演出家』とか書いてくださる方がいるんですが、あまり過剰に書くと消防庁から目をつけられるので止めてください!」と笑いを誘いました。

そしてお話は「叢雲-MURAKUMO-」から4年後に上演されたシアトリカル・ライブ「Relic ~tale of the last ninja~」の話題に。この舞台では藤沢さんの念願が叶い、吉田さんが新・純邦楽ユニット「WASABI」として演奏に参加。藤沢朗読劇への初出演を果たしました。

なお「Relic ~tale of the last ninja~」には「叢雲-MURAKUMO-」にも出演していた声優の中村悠一さんも参加。両作品ともに、「最後に中村さんが死んでしまう」というエンディングだったため、中村さんからは「今度は絶叫して死なない役にしてください」と言われたという裏話が披露されました。ファンからすると「絶叫しながら絶えていく中村悠一さん」は最高なのですが、中村さんが次に出演したクリエ プレミアム音楽朗読劇VOICARION「女王がいた客室」では藤沢さんはこのお願いをきちんと反映したそうです。

裏話を語る藤沢さん

そして話題はいよいよ「千本桜義経」に。「吉田さんは、世界ツアーなどを経て成長してきていて、僕は僕でこの1年成長してきました。ですから(「Relic ~tale of the last ninja~」とは)また違ったぶつかり合いをしてみたかった」と今回再び吉田さんとタッグを組むことになった経緯を語った藤沢さん。今回は源平合戦が終わり、最終的に義経が死んでしまう直前のお話だという「義経千本桜」。物語はひとりぼっちになった義経のもとに、かつて助けた子ぎつねが現れて――というストーリーです。

「Relic ~tale of the last ninja~」では戦闘シーンが多く、津軽三味線の真骨頂ともいえる激しいバチさばきが話題を呼びましたが、「今回は心情に訴えかけてくるような演奏が魅力」と藤沢さん。吉田さんは「三味線が生まれたのは今から5~600年前で、実は義経の時代には津軽三味線は存在していなかった」と語り、どうやって津軽三味線で表現するのかという葛藤もあると明かしました。

また藤沢朗読劇では台本の初稿から照明や特殊効果、音楽を入れるタイミング、曲のタイトルなどが設計図のように記されているのが特徴。タイトルから藤沢さんのイメージをつかみ取って曲作りに挑むという吉田さんは「うれしいようなプレッシャーのような」と語りながら既に1曲目のイメージは固まっている様子。開場前のリハーサルでは貴重なデモを披露し、藤沢さんやスタッフからの評判も上々でした。

楽曲について語る吉田さん

レイチェルさんから「台本を仕上げるのがギリギリになってしまうとよく聞きますが、藤沢さんはめちゃくちゃ早いんですよね」と振られた藤沢さんは、自ら「地上最速と言われています」と回答。「自分で言っちゃうんですね」と吉田さんがつっこみ、会場は笑いに包まれました。

さらにレイチェルさんによると超がつくほどの歴史マニアだという藤沢さんですが、衣装を手掛ける東宝・衣装部とは阿吽の呼吸とのこと。レ・ミゼラブルなどを担当している衣装さんが担当といい、「こんな感じですか?」とあがってくるプランはほとんど藤沢さんのイメージ通りなのだそうです。大河ドラマにも負けないスゴイ衣装を用意しているとのことで、いったいどんな衣装になるのかも注目です。

また今回の朗読劇に関しては、ほとんどあてがき(俳優や出演者をあらかじめ決めておき、その人物に合わせて脚本を書く手法)を採用しているとのこと。主役で義経を演じる浪川大輔さんに「今回は沢城さん演じるきつねが浪川さんに付き従うストーリーで……」と連絡をしたところ、「ようやく沢城みゆきを部下にできます」と笑っていた、というエピソードも披露されました。

キャスティングについて語る藤沢さん

浪川さんを義経に抜擢したことについては、「義経は誰からも愛される武将だったということで、子役時代から業界にいて誰からもかわいがられてきた浪川さんにぴったりだった」と明かした藤沢さん。きつねを演じる沢城みゆきさんについては「七色の声の七変化」をテーマに、1人で複数役を演じるということが明かされました。悪役で冷たい印象の役だという小林裕介さんは、義経を史実上殺したといわれている男を演じます。

関智一さんはゴリゴリの商人役を中心に1人で複数役を担当し、中にはカッコいい色男の役も含まれているとのことです。井上和彦さんは物語のカギを握る弁慶役。荒くれもののイメージが定着している弁慶ですが、実はとても頭のいい「知将」だったと語る藤沢さん。「井上さんのダンディーさで、頭の良い弁慶を見せていただこうかなと思っています」と話すと、観客は納得の表情で聞き入っていました。

また注目の音楽については、「顔合わせをしたりするたびにどんどん方向性が変わってくるので、書き直しを重ねていきます」と吉田さん。吉田兄弟で演奏する楽曲に関しては一曲も譜面がなく、全てを口伝(くでん)で説明すると明かし、会場には驚きが広がりました。これは津軽三味線の演奏技巧が複雑すぎて譜面に落とし込めないからだといい、名曲「津軽じょんがら節」にも譜面は存在しないのだそうです。

今回の朗読劇でも吉田さんがメインとなる楽曲は口伝での演奏を予定。吉田さんの津軽三味線を中心に尺八、箏(そう)、十七絃(じゅうしちげん)、太鼓・鳴り物、篳篥(ひちりき)が和音を奏でる姿は見逃せません。

ベースの音楽については「ストーリーを考えたときに出てくるメロディー、つまり泣けるメロディーになるのでは」とのことで、津軽三味線ならではの「泣ける音」にも注目です。さらに吉田さんは「篳篥などは生で聞く機会があまりないと思うので、ぜひ注目してほしいです。会場全体で『和』を感じていただけたら」と語りました。

演奏者を「もう一人の出演者」と位置付けているという藤沢さんは、「決してBGMとは考えていません」と朗読劇での音楽に対する考えについても語りました。特に声優さんのペースなどに合わせて情感たっぷりに演奏したり、テンポを速めたりするため毎公演、演奏のペースなどが変わるのも魅力の一つなのだそうです。これに対して吉田さんは「セッション的な要素は和楽器の得意分野なので、その時々で合わせていきます」と自信を見せました。

また朗読劇を行うたびに「再演してほしい」という声があがることについては、「これだけのキャストがゲネプロ(リハーサル舞台)を合わせて3日間も集まってくださるのは奇跡的なことなんですよね」と語りました。舞台は「なまもの」とよく言われますが、こうした難しさも緊張感のある舞台を生み出しているのですね。

彩雲を演奏する吉田さん

トークショーの終盤には吉田さんの生ライブがスタート。あえてマイクを使わずに「生音」にこだわる吉田さんは、津軽じょんがら節をベースとし、北海道の空をイメージしながら作曲したオリジナル曲「彩雲」を演奏しました。目にも止まらぬ早弾きと、繊細なバチさばきは息をのむ大迫力。演奏が終了すると会場からは割れんばかりの拍手が贈られました。

演奏終了後は、ピザ窯の前で演奏したのは初めてと語った

最後に作品の見どころについて聞かれた藤沢さんは、「日本人のソウルストーリーという部分がベースにあります。昨年は戦闘もの、今年は泣けるものというテーマはあるんですけれども、今回お見せしたいのは超絶技巧です。吉田さん率いる音楽もそうですし、声優の皆さんもトップレベルの方々が1人何役も化けて――というぶつかり合いも魅力です。これは皆さんぜひ生でご覧になって頂けたらと思います」と語りました。また、今回は初使用の演出があるということも明かされ、「観客の皆さんに体感して頂けるのが楽しみ」とも話しました。

吉田さんは作品(楽曲)作りはこれからとしつつも、「津軽三味線ならではの激しさと情感あふれるメロディアスな演奏を期待してほしい」とのこと。「日本人だからできるストーリー、音楽、声優さんの技がありますし、世界にも誇れる技術だと思います。ぜひ皆さん会場にお越しください」と語り、トークショーは幕を下ろしました。

トークショーの終了

会場ではこのあと、藤沢さんと吉田さんが持ち寄ったお宝グッズのじゃんけん大会が行わました。用意されたのは、藤沢朗読劇の新アイテム「涙ふきタオル」、「Relic ~tale of the last ninja~」のパンフレット、「叢雲-MURAKUMO-」のクリアファイル、吉田さんの使用済み「三味線ふき」などに直筆サインというファン垂涎の逸品ばかり。運よくプレゼントをゲットしたファンの中には涙ぐむ人の姿も見られました。

じゃんけん大会のお宝グッズ

じゃんけん大会のお宝グッズ

吉田さんの手元に一喜一憂する観客の皆さん

藤沢朗読劇の新グッズ、涙拭き

「劇場などで個々にサインをさせて頂いたり、お話をさせて頂くことはありますが、じっくりとトークショーをするのは実は初めてだった」と語った藤沢さんと、息をのむ生演奏で会場を一気に「和」の世界に引き込んだ吉田さん。あっという間の2時間のトークショーにお客さんたちは口々に「とても楽しい時間だった」「朗読劇が楽しみ」などと語り、笑顔で会場を後にしていました。

イベント終了後、ファンと交流するレイチェルさん

サインする藤沢さんと吉田さん

5月27日、28日に上演予定の「千本桜義経」は現在先行受付がスタートしています。日本トップレベルの声優たち、そして日本が誇る和楽器の魅力が最大限に盛り込まれた朗読劇をぜひ劇場でお楽しみください。会場では限定販売のカラー印刷プログラムの販売なども予定されていますので、この機会をお見逃しなく。それでは皆さんの、また会場でお会いしましょう……!

千本桜義経

(文・写真: Kikka)